年の瀬連投sitaranaです。
ゲームクリアしたのに、積んでるゲームの多さを見返すと、レビュー書いてる場合か?とか意味不明の自問をしてしまい、レビューの筆が遅くなっていました。
ともあれ、結論としては、やったゲームの感想をアウトプットする訓練なので、結局書くんですけどね。
さて、今回のレビューは往年の名作のリメイク「タクティクスオウガ リボーン」です。
SFC版を3章まで進めて放置して、PSP版リメイクをスルーしていた私。
ようやくクリアできました。
世間の評判は悪いが、果たして・・・。
プラットフォームはSteam。初期バージョン。Lルートクリアで、プレイ時間は88.3時間です。
ちょっとだけネタバレあるのでご注意を。
どんなゲーム?
戦術レベルのSRPG、1ステージがファイアーエムブレムよりちょっと小規模くらいの規模感、といったところ。
部隊単位ではなく、1人1人を操作して敵を殲滅するのが基本スタンス。
撤退戦とかはないよ。
ファイアーエムブレムとかと明確に違う点として、間接攻撃の攻撃射程がかなり長い、という点が挙げられます。
ファイアーエムブレムなんかだと精々2~3マスくらいの射程ですが、マップに高低差の概念があり、10マスくらい届いたりします。
これを防御力が低い魔法使い系の後衛ユニットが頻繁に受けたりとかする感じなので、間接攻撃の距離感は大分異なるでしょう。
シナリオ面では、メインが民族紛争だの宗教だのといった割かしドロドロした風味のお話が中心です。
特に選択肢によっては虐殺に加担することもあるなど(もちろん、それなりの理由はある)、後ろ暗いマルチシナリオは王道とかけ離れた風情があり、これが魅力の一つでもあります。
さて、周知のことと思いますが、本作はSFC版から数えて2度目のリメイクとなります。
リメイクの度に戦闘に関わるシステムにかなりの変更が加わってきた結果、
よく分からんことになっているというのがプレイした感想です。
戦闘バランスのデフレーション
SFC版やPSP版をプレイした諸氏におかれましては、即死レベルの攻撃がガンガン飛んでくる火力インフレゲー、という印象があるのではないでしょうか。
HPが0になると猶予なくキャラロストするので、これはこれで辛いものがありました。
特に弓による間接攻撃でも火力が出せたので、ホークマンなどの高低差を無視して移動できるユニットを採用して、高所に陣取ってひたすら矢の雨を降らす、という戦術がとても強力でした。*1
本作では、そのようなバランスに対するカウンターとして次の3つの調整がされています。
- 全体的にユニットのHPが数倍になっていて、即死しづらい
- 武器ごとに切断・打撃・貫通などの物理属性が設定され、鎧を着た前衛キャラは弓に対して絶大な耐性を獲得した
- HPが0になっても、即キャラロストしないようにキャラロストまでのカウントダウン制が採用された
特に2つ目については、HPが700などある中で1ダメージしかでないなど、かなり極端な調整がなされています。
逆に鎧系を装備していない後衛のユニットには3桁ダメージを出せるので、向き不向きを分けた、ということでしょう。
結果として、戦闘スピードは遅めにチューニングされたことになります。
ナイトなどのジョブではZOC*2を持っていたりするので、じっくり戦線を構築して押し合いをするバランスに変わったのか・・・
と思うじゃん?
神の見えている手
本作について情報を集めている諸氏におかれましては、「戦場にカードが湧いてくる」「カードバフゲー」などという悪評を耳にしているかと思います。
それらは事実です。
チュートリアルとして、「戦場にカードが湧いてくるので、それらをうまく取れよ!」とアナウンスされます。
で、それらのカードを取ると、攻撃力が1.5倍*3になったりします。
これが最大4枠まで重ねることができる、となるとその効果のほどが想像できるでしょう。
カードを取るか取らないかで戦闘能力が段違いになるので、擁護する余地もなくカードゲーです。
加えて、シナリオ中盤からは
ステージごとのボスユニットがカード4積み状態からスタートするようになります
このため、極端な戦力差が展開されることになり、
全体的にはデフレ、一部だけインフレという状況が常態化します。
当然ボスユニットに殴られると戦線を容易に破綻させられるくらいに厳しいバランスです。(ボスユニットだけ半殺しダメージをばらまいてくる)
なお、これには対抗策が用意されており、アイテムによってごくごく簡単にデバフをばらまくことができます。
なので、本作ではまずボスにデバフアイテムを投げつけて弱体化させる、というのがセオリーとなります。
ボスが遠距離攻撃手段を持っていると、アイテムを投げる前に攻撃をばらまいてくる地獄絵図が展開しますが。
バランスのとり方おかしくない?
システムの不自然さもまた無視できないところです。
システムには現実的な要素をモデル化されたものだと察するものと、現実にはない独自要素をゲームの観点から付け加えたものがあると考えますが、このカードシステムは明らかに後者です。
これは現実とはかなり乖離している要素で、「なんでこんなものが?」とユーザが疑念を抱くものです。メタ的には世界観の観点から組み込まれていて、ユーザにはそう見えている・・・というような整合性や説明を与えてくれると大好物なのですが、そういった面がなくて不自然すぎるという面もあるように思います。
なまじ民族紛争や宗教論争といったリアルよりの世界観を展開しているだけに、唐突に生えてきたように見える要素は受け入れがたいのではないでしょうか。
ランダム・ランダム・ランダム
カードバフについて散々文句を付けましたが、実のところそれだけならそこまでバランスは破綻していない、というのが個人的な意見です。
私の意見としては、ランダムを重ねすぎているのが問題だと思います。
多少のランダム要素を味付けとして入れるにしろ、SRPGにおいてはステージを攻略する筋、そして状況をコントロールするというゲーム性が存在すると思いますが、本作のランダム性はそれらをことごとく破綻させるのです。
第一にカード。
効果量が破格な割に、どこに何の種類のカードが湧いてくるのかがランダム。
ユニットの位置取りなどに制限を加えるだけにとどまらず、ダメージ予測を破綻させる。
第二にスキルのランダム発動。
SFC版に比べてスキルによって差別化されたジョブは多いが、戦局に影響が大きいスキルほどランダム発動になっている。
例えば、ナイトのファランクス*4やガーディアンフォース*5などの発動タイミングによって有効度合いが大きく変わるものなど。
特に魔法使いは酷い。というのも、魔法使いはMPがないとかかしとなるわけですが、タクティクスオウガでは最大値から決まった分を使いつぶす方式ではなく、徐々にチャージする方式を取っています。
このチャージを加速させるスキルの発動がランダム。つまり、運次第で全く機能しない、ということがまま起こるのです。
武器を使った行動は最悪でも可能なので、MPに行動を依存するユニットはそれだけで使いづらい・不確定要素という烙印から逃れられないのです。
クラシックなスタイルのSRPGにおいて、位置取り・ユニットの運用という基本戦略レベルの部分にランダム要素が放り込まれているのです。
勿論クリティカルや命中率といったベーシックなランダム要素はありますが、それらと比べても、根本的な部分でコントロールが効かないというのは、あまりにゲーム性と食い合わせが悪いと言わざるを得ないでしょう。
その他のデフレ
ここまで戦闘システムにのみ言及してきましたが、実はそれ以外の部分も大分デフレしています。
SFC版をプレイしていた人ならば、敵がレアの装備を持っていて、ステージごとに意味あるのかな?というくらい固有の武器がドロップした記憶があると思います。
今作は、それらは隠しダンジョンまで一切オミットされます。
また、シナリオの進行状況に対して強制的にレベルキャップが設定されることも見逃せません。
同じようなスタイルのゲームとして、サモンナイトも追加報酬に関わる形で目標レベル設定が存在しましたが、あくまでやり込み要素としてであって、プレイヤーに強制するものではありませんでした。
そのくせ、ユニットのジョブごとの成長もデフレされているので、成長の面でも個性をつけにくいし、強くてニューゲーム*6にすらレベルキャップを用意してくる始末。
傾向としてはガッチガチに難易度コントロールしたい意図が見えます。
しかしながら、ユーザへの報酬まで減額するのはどうなのか。
まとめ
凡作です。
素材は悪くないのに、料理が滅茶苦茶。
元からあるゲーム性に対して食い合わせの悪い要素をアドオンした結果、酸っぱい厚焼き玉子ができちゃったみたいな残念さを感じました。
ただ、戦闘バランスとしては、中盤(2~3章)が敵のインフレでぶっ壊れているくらいで、終盤は一周回って味方も火力がインフレしていく都合、そこまで破綻していないように感じました。
ファランクスとか任意発動できるだけで大分違うんじゃないかなー、と思います。